これからのストラクチャー製品づくりのあり方についての考察 後編です。
模型店の話を聞くと口を揃えて現在の鉄道模型市場は車輌がメインでレイアウト用品の販売ボリュームは小さいといいます。
販売ボリュームに対し多種生産が求められるため量産効果が出しづらいのもレイアウト用品の特性であるかと思います。
金型を彫ってインジェクション成型で量産したプラスチック製品は非常に生産効率が高く、部品一個あたりの単価が非常に安くなります。細かいディティール表現も金型に彫っておけば一発で成型できるわけですから塗装・組み立て作業の時間も極めて短くできます。
ただし緻密な金型設計は非常に高度な技術と経験を要し、樹脂の流れ込みが上手くいかなければ彫り直しということもあり初期投資がかなり高くなります。数百万レベルといわれています。
1アイテムの販売量が小さくなりがちで商品が売れるスピードや回転が鈍いレイアウト製品ですと、高価な金型を起こすことは逆にリスキーかつ不経済になってしまうことがあります。
そのためレイアウト製品はレーザー彫刻機やNCルーターなど初期投資が低く柔軟性の高い製造技術を活用するケースが増えてきます。
ただしレーザーやNCルーターは加工時間が長くなりがちで作業工賃が高くなりがちになるという難点があります。レーザーのカット時間やNCルーターの研削時間を短縮するためにディティール表現を簡素化しなければなりません。また基本的に板からの加工ですので塗装組み立て工程におけて貼りあわせ等の手間が増えてしまい、ここでまた作業コストが跳ね上がります。ですのでユーザーに塗装組み立て作業を委ねるキット形態で商品化したり、さんけいのみにちゅあーとシリーズのように印刷表現を併用することとなります。
金型成型にしてもレーザー等の機械加工にしても長所と短所があり、初期投資を抑えれば加工効率が悪くなり、加工効率を上げようとすれば機械投資が嵩み「あちらを立てればこちらが立たず」という調子です。
低廉かつ質の高いレイアウト製品を生むことは非常に難しいということをご理解いただければと思います。
しかしながらそういう事情があったとしても一軒何万円とか何十万円もするストラクチャー製品を販売することは現実的とはいえません。巧妙なコストシェアリング術(コストカットではない)が求められます。
ではそのコストシェアリングをどのような形で行うのか?
一軒のストラクチャーを構成するパーツ・・・・・屋根瓦・窓ガラス・壁・ドアなどがありますが、それぞれ他のストラクチャーと共用性が高い部分と個別性や多様性が求められる部分に仕分けを行います。
共用性が高いパーツは金型成型やスクリーン印刷など初期投資が高くても量産効率がよい技術を活用し部品単価を低減します。屋根瓦や窓ガラス・ドアががその筆頭にあげられますが、タイル壁やレンガ壁についても素材として共用パーツ化していった方が良いでしょう。部品共用は一社の製品だけに留まらずOEM生産で複数メーカーで共用すればさらに利益率が高くなるはずです。
窓やドアの穴開け、屋根・壁材の切り出しはレーザーもしくはNCルーター等を使えばユーザーの要望の個別化や多様化に対応できます。
このような方策は自動車部品メーカー等では当たり前に行われているのですが、模型製造の世界ではあまり例を見かけない気がします。情景模型創りに熱心な一部の模型メーカーにその動きがあることにはあるのですがまだ萌芽期といったところでしょうか。
豊かな情景模型文化を育て上げたいという志やビジョンを持つメーカーや商品企画担当者がいる一方で、鉄道模型文化や情景モデラーの立場や要望を理解できない販売店やメーカーも存在し的外れかつ軽挙妄動な商品企画が闊歩しているのも確かです。そのことで多くの不良在庫増加を招き模型商品の価格を上昇させてしまったり、「レイアウト製品は売れない・儲からない」という思い込みを業界に撒き散らすことになります。
にほんブログ村に参加したなり~。
↓ https://railroad.blogmura.com/railroad_mokei 鉄道模型
↓ https://railroad.blogmura.com/railroad_mokei 鉄道模型