2011年11月

これからのストラクチャー製品づくりのあり方についての考察 後編です。
 
 模型店の話を聞くと口を揃えて現在の鉄道模型市場は車輌がメインでレイアウト用品の販売ボリュームは小さいといいます。
 販売ボリュームに対し多種生産が求められるため量産効果が出しづらいのもレイアウト用品の特性であるかと思います。
 金型を彫ってインジェクション成型で量産したプラスチック製品は非常に生産効率が高く、部品一個あたりの単価が非常に安くなります。細かいディティール表現も金型に彫っておけば一発で成型できるわけですから塗装・組み立て作業の時間も極めて短くできます。
 ただし緻密な金型設計は非常に高度な技術と経験を要し、樹脂の流れ込みが上手くいかなければ彫り直しということもあり初期投資がかなり高くなります。数百万レベルといわれています。
 1アイテムの販売量が小さくなりがちで商品が売れるスピードや回転が鈍いレイアウト製品ですと、高価な金型を起こすことは逆にリスキーかつ不経済になってしまうことがあります。
 
 そのためレイアウト製品はレーザー彫刻機やNCルーターなど初期投資が低く柔軟性の高い製造技術を活用するケースが増えてきます。
 ただしレーザーやNCルーターは加工時間が長くなりがちで作業工賃が高くなりがちになるという難点があります。レーザーのカット時間やNCルーターの研削時間を短縮するためにディティール表現を簡素化しなければなりません。また基本的に板からの加工ですので塗装組み立て工程におけて貼りあわせ等の手間が増えてしまい、ここでまた作業コストが跳ね上がります。ですのでユーザーに塗装組み立て作業を委ねるキット形態で商品化したり、さんけいのみにちゅあーとシリーズのように印刷表現を併用することとなります。
 
 金型成型にしてもレーザー等の機械加工にしても長所と短所があり、初期投資を抑えれば加工効率が悪くなり、加工効率を上げようとすれば機械投資が嵩み「あちらを立てればこちらが立たず」という調子です。
 低廉かつ質の高いレイアウト製品を生むことは非常に難しいということをご理解いただければと思います。
 
 しかしながらそういう事情があったとしても一軒何万円とか何十万円もするストラクチャー製品を販売することは現実的とはいえません。巧妙なコストシェアリング術(コストカットではない)が求められます。
 
 ではそのコストシェアリングをどのような形で行うのか?
 
 一軒のストラクチャーを構成するパーツ・・・・・屋根瓦・窓ガラス・壁・ドアなどがありますが、それぞれ他のストラクチャーと共用性が高い部分と個別性や多様性が求められる部分に仕分けを行います。
 共用性が高いパーツは金型成型やスクリーン印刷など初期投資が高くても量産効率がよい技術を活用し部品単価を低減します。屋根瓦や窓ガラス・ドアががその筆頭にあげられますが、タイル壁やレンガ壁についても素材として共用パーツ化していった方が良いでしょう。部品共用は一社の製品だけに留まらずOEM生産で複数メーカーで共用すればさらに利益率が高くなるはずです。
 窓やドアの穴開け、屋根・壁材の切り出しはレーザーもしくはNCルーター等を使えばユーザーの要望の個別化や多様化に対応できます。
 
 このような方策は自動車部品メーカー等では当たり前に行われているのですが、模型製造の世界ではあまり例を見かけない気がします。情景模型創りに熱心な一部の模型メーカーにその動きがあることにはあるのですがまだ萌芽期といったところでしょうか。
 
 豊かな情景模型文化を育て上げたいという志やビジョンを持つメーカーや商品企画担当者がいる一方で、鉄道模型文化や情景モデラーの立場や要望を理解できない販売店やメーカーも存在し的外れかつ軽挙妄動な商品企画が闊歩しているのも確かです。そのことで多くの不良在庫増加を招き模型商品の価格を上昇させてしまったり、「レイアウト製品は売れない・儲からない」という思い込みを業界に撒き散らすことになります。
 
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 あとりえミューの円錐形石積み橋脚を僅かな数ですが複製しています。需要はかなり小さいといっても無いという状態ではないので細々ながら生産は継続していきます。ただ今回から2本セット1,500円に価格と販売方式を変更させていただこうかと思っています。
 円錐形石積み橋脚に限ったことではありませんが、レイアウト用品そのものの需要規模が小さい上に商品の捌けや回転も鈍いという状況はそう簡単に変わらないだろうという予測が立ちます。
 少ない1アイテムあたりの販売数でも成り立つような生産販売モデルを構築していかねばならないでしょう。
 ストラクチャー製品についても半ば特注品に近いものも作っていかざる得ないでしょう。商品の値上げだけではなく設計や生産のスタイルも変えていく必要があるかと思います。
 なんか乗用車というよりバスとかトラック、特装車の製造に近い感覚ですね。レイアウト製品は。
 
 画像は複製中の橋脚と製品を使ったわがレイアウトの様子です。
イメージ 1
 
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 レイアウト製品・・・・中でもストラクチャー製品の企画・製造の今後について私見をお話していこうかと思っています。まずは製造と技術の面から参ります。
 
 今にはじまったことではありませんが、鉄道模型製品の場合レイアウト関連商品は車輌モデルに比較して販売ボリュームが小さく、小売店での”回転”や”捌け”も悪いといわれています。よく日本の鉄道模型メーカーや販売店は車輌偏重だといわれがちですが、実情を考えるとそれは致し方ないことかと思います。
 一軒のストラクチャーは数千円程度で買えるものですが、レイアウト全体のトータルコストは金銭に換算しにくい時間コストや製作の労力負担を含めるとものすごく重く、高いものになるかと推察されます。作りこんだモジュールレイアウトでも数万円から数十万円。(材料費だけならそうかからないと思うが)畳1~2畳程度の大きさになると数十万から百万台に入ってもおかしくないというのが私の予想です。
 それを考えるとレイアウト製品は簡単に早く売れるものでは決してないという答えが出てきます。
 さらに新興住宅街や団地でもない限り、同じ建物がズラリと並ぶという光景は現実世界であまり見かけません。ひとつのレイウアトに違った種類の建物を何軒、何十軒も置く必要があります。ストラクチャー製品メーカーは少量多種生産を余儀なくされます。
 
 となると大量生産によって製品一個あたりの単価や利益を低くし、広く・薄くコスト分散しシェアリングを計ることが難しくなってきます。また高度で新しい工業技術の活用ができにくい問題もあります。
 車輌モデルの場合優れた金型技術等がふんだんに用いられ精密かつ均質な製品が世に送り出されていますが、ストラクチャー製品を見ますと1ランクも2ランクも技術水準が下がってしまっていることが多いです。ストラクチャー製品にコストをかけられないため同じ金型を何十年も使い続けないといけませんし、新製品もリスクを考えると初期投資をなるべく低く抑える必要があります。
 
現在用いられている市販のストラクチャー製品の製造手法をざっと挙げてみると
1 金型を用いたインジェクション樹脂成型 
2 レーザー彫刻機による切断もしくはスジ彫り加工
3 NCルーターによる研削加工 
4 印刷(レンガ・瓦屋根・木目など)・塗装
5 プレス裁断
6 コールドキャストレジン成型
などになります。
 
製品の原材料は樹脂(プラスチック)・紙・木・金属です。
 
 製造手法や材料の選択、組み合わせはメーカーによって大きく異なりますが、大量生産型のストラクチャー製品を作る大手メーカーのKATO TOMIX GMなどは1の金型インジェクション成型によるプラスチック製品で、窓サッシもパッド印刷機や特殊インクジェットプリンターで印刷表現しています。(旧製品は省かれていることがある)
 GMキットの場合は建物本体のみインジェクション成型を採用していますが、窓ガラスのみ透明樹脂シートへのスクリーン印刷という手法を用いました。
 2のレーザー彫刻機や3のNCルーターによる切り出し・研削加工製品は最近になって目立ちはじめています。
 レーザーカットによるペーパーキットの代表格はさんけい:みにちゅあーとシリーズですが、これは4の印刷という手法と組み合わせることによってコストアップや生産効率低下を防いだ折衷型製品といえましょう。DDFの製品も2か3のいずれかに当てはまります。
 5のプレス裁断はCASCO様ですね。。。。。
 
 様々なメーカーが自社の持つ得意の技術や生産設備を活かし、独自の工夫を重ねて難しい条件の中ストラクチャー製品づくりを行っています。商品のまとめ方に対する考え方や立場が異なれどそれぞれのメーカーが行ってきた努力に対し私は深い敬意の気持ちを抱いています。
 しかしながらそれでもまだ廉価かつ高い品質を有するストラクチャー製品を生むための工夫の余地がいくつも残されているのではないかと思うのです。私が他社のストラクチャー製品を手にとってみたとき意外にもひとつの製造方法やひとつの材料だけに頼ったり固執して商品企画や設計を行ってしまっているのではないかと感ずる場合が多いのです。
 金型インジェクションならば全てプラ成型とか、全部レーザーカットで材料は紙のみといった具合です。
 1~6まで挙げた製造手法や技術は長所と短所があり、一番高い費用対効果が得られる生産個数も違ってきます。材料についても同じです。どの材料をどこに使うのが適材適所なのか。どの手法をどういう商品にどういう条件で使うのが最善なのかは販売見込み等によって複雑に変わってきます。
 顧客の最大の満足のために最善といえる手法や材料を選択するというのが理想的ですが、現実の商品創りにおいてそれが実現しているのかというとそうなっていません。私の体験から言ってもそうです。
 小さいメーカーですと特にですが、様々な物理的制約に縛られながらものづくりを進めていかねばなりません。しかもストラクチャー製品のように需要が極めて限定的で小さく拡大の見込みが望めない商品の場合、新たな機械投資や技術開発費を極力抑えこむ必要があります。故に生産効率やコスト・品質の面から最善でないとわかっていても現有の生産設備や持っている技術・リスクの問題上やむを得ず従来手法を踏襲して製品づくりをしていくのです。
 厳しいコスト条件や拡大が見込めない市場の中で、品質と顧客満足度の向上を計りつつ利益も確保していく方法は何か。そのひとつがメーカー同士の横軸連携です。
 同じ模型製品を作っている会社といっても前身は元金型屋だったり樹脂板の機械彫刻屋、印刷屋、プレス加工屋だったりします。あるメーカーはレーザー加工機を持っているけれど機械彫刻ができないとか、金型設計ができるけれども印刷設備がないということがあるかと思います。
 異業種参入組同士が横軸の連携を組み、常に最善かつ効率の高い製造手法をと材料を使い、顧客にとって最も満足度の高い商品を創る。そういう方策を採っていくことが今後必要になってくるのではないでしょうか。
 
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 またもやガレキ稼業裏話・・・・・。
 
 「国鉄自動車線駅1」の設計作業を少し離れ、久々にあの「円錐形石積み橋脚」の複製をやろうとレジンキャスティングの準備をしました。
 かなり久々にレジンキャスティングをやったのですが、シリコンの型が旧くなっていたせいか上手くいきません。
 2回目のときにレジンがシリコンに喰いこんでしまったのか離型時に壊れてしまいました。やむなく新しいシリコン型の作成です。結構型の寿命は短いですね・・・・・・。
 一応新しいシリコン型は出来上がりましたがレジン注入は上手くいくか?
 
 今日注型用ウレタン樹脂にとって最大の敵ともいえる雨が降っており樹脂が湿気を含まないか心配です。(水分を含むと気泡の原因となりやすい。蛇足ながら最近流行のウレタンクリアコート塗料も防湿に気をつけるべし)
 
 さて・・・・・ここから少しボヤキモード
 
 周囲のいろいろな情報を読むとレイアウト製品販売の雲行きが怪しいというか厳しくなっているような・・・・・。(私の勝手な思い込みに過ぎないことを祈る)
 当方も今の路線のままでは先行きが危ういのではという気がしてならぬ。
 (私の知っている人もどうやら鉄道模型ストラクチャー製作業から離れられた模様・・・・・)
 
 某量販店を中心に取り扱って頂いている塗装済み完成ストラクチャーシリーズは来年もシリーズを継続するつもりですが、今後は薄利多売ではなく少量生産・高付加価値・高利益型製品という方向にしていくつもりです。
 レイアウト用品は車輌モデルのようにユーザーが年に何台も購入していくというものではありません。鉄道模型クラブに所属しモジュール式レイアウトを毎年のように作り重ねる方たちであればストラクチャーをどんどん買って行かれますが、たいがいは一生のうちにレイアウトを2~3回作れるかどうかといったところではないでしょうか。
 消費サイクルが極めて永く回転が低い商品となりますと一商品の利益率をうんと大きくしなければなりません。
 ”高付加価値”とはいったものの、投入できる技術選択肢が限られており高い品質の維持も難しいのです。
 
 高いくせに品質が悪い・・・・・・・
 
 そうなってしまうのが嫌なところです。
 
 価格を上げず品質の向上を計っていくための方策を考えていることには考えているのですが、それを実現するには数社の横軸式連携が不可欠。それが果たしてできるのかどうか?
 
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本家様が完成写真をブログ公開されたからもういいでしょう。もう大須GMのイベントが終わり月曜日になったことだし・・・・。
 
「須田(寛)さんのでっかい鉄コレを見に行く」の最後にチラと書きましたが、
こちらの方が作られた非常に電車みたいなディーゼルカーを紹介させていただきます。 
本当は見せていただいた当日の晩に記事を書きましたが、作られた方の希望で今までナイショにしておりました。 
 
 白い先頭部がツルツル・ピカピカ
 フィニッシャーズのピュアホワイトをリターダー入り薄め液でシャビシャビ気味に溶いて吹き付けたとのことです。ウレタンクリア等は吹いていないそうですが非常にきめの細かい美しい艶です。
 側面部 ステップつきドアへの改造準備工事済みの状態を再現してあります。とり急ぎ修正箇所のみガイアのダークステンレスを吹き付け。ガイアから併売されているメタリック専用薄め液で希釈したとのことですが、非常に粒子の細かい金属調塗装になっています。作者J-power氏は「本当はビート部分全体を塗り直したかった」とおっしゃられていましたが、もしそうなると最近のKATO製品並に息が止まるほど美しい輝きが実現されることでしょう。(今の状態でも違和感がないですが。)
 気動車らしい排気管。天を突くような感じです。
 クーラーキセはクレオスのスーパーメタリックシルバーネクストで塗装。
最近は各塗料メーカーが技術を競い合い、より粒子がきめ細かくリアルで美しい金属の質感が再現できる塗料を数多く開発しています。まさに技術が生んだ多様性!先にも書きましたとおりKATOはEF81-300番台等でかなり金属感の高いメタリック塗装を施すようになってきました。
我々モデラーも仕上げ技術を磨きどんどん進化しないといけませんねえ。
  床下チェックも忘れてはなりません。
 ワタシも伊勢神宮の式年遷宮集中輸送・武豊線電化が完了した後、キハ25の導入を計りたいと思っています。(実車の転用・転属後にドアステップ改造や幌の取り付け方向に変化があるかも知れないので)
 改造の参考にさせていただきます。
 
J-power様 秀逸な作品をお見せ下さりありがとうございました。「ハラショー」のひと言です。
(もし間違い・不適切な記述がありましたらお知らせください)
 
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